Loading...

ごあいさつ

 今日、わが国の小児医療を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。少子化や予防接種制度の充実によって、従来小児科の主な対象疾患であった感染症は激減する一方、子育て支援や発達障がいの子どもへの対応、あるいは思春期児童への心のケアが求められています。しかし疾病構造が変わっても、小児科医の役割が軽くなることはありません。なぜなら「子は国の宝」と言うように、国が成長・成熟し続けるためには、次代を担う子どもが健やかに成長できるよう、小児科医が大いに活躍する必要があるからです。さらに診療以外においても大学の小児科学教室は「数少ない総合診療科」として「良き臨床医育成のための研修医・医学生教育における教育面での役割」を他の診療科以上に求められています。
 以上のような小児医療や小児科医を取り巻く現状を鑑みて、私ども大学病院の小児科医の責務を考えますと、病に苦しむこどもやそのご家族の心身の健康を取り戻すお手伝いだけでなく、次代を担う若手医師が少しでも小児医療に魅力を感じるような教育をすることだと思います。幸い、私どもの講座は開講以来90 年、数多くの優秀な小児科医を輩出してきた歴史と伝統があります。しかしこの歴史と伝統に甘んじることなく、小児科を志す若者が一人でも増えるよう様々な教育的配慮を行っています。例えば、週3回、教授以下、全医局員が参加し病棟患者のカンファレンスを行い、様々な角度から入院患者さんの病態、治療法、合併症への対応などをディスカッションしていますが、その輪の中に医学生や初期研修医の先生にも加わってもらい、小児の疾患治癒過程を実感させ、「総合診療」としての小児科のやりがいを伝えています。また研究を通じて小児科学の面白さを知ってもらうため、小児科専攻医の先生にはできるだけ大学院に入学してもらい、自分が興味を持った疾患、疑問のある病態について自らで研究計画を立て、実験し、解決する喜びを経験して貰っています。現在、関西医大小児科大学院では「腸内細菌叢の異常と小児の健康」を研究のメインテーマに据え、様々な小児期の疾患と腸内細菌叢の乱れとの因果関係を精力的に研究していますが10人以上の大学院生がこのプロジェクトに積極的に参画しています。
したがって、「子どもが好き」、「総合診療ができるようになりたい」、「トランスレーショナルリサーチ(基礎と臨床の間の橋渡し研究)をしてみたい」と思っていらっしゃる医学生や初期研修医の皆さん、是非、一度、私どもの関西医大小児科の見学にお越し下さい。
 最後になりましたが、常日頃から多くの患者様をご紹介頂いております近隣開業医、勤務医の先生方、温かい御支援を頂いている温仁会(関西医大小児科同門会)の先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。今後も相変わらぬご支援、ご鞭撻を切にお願い申し上げます。

関西医科大学小児科学教室 主任教授 金子 一成