上岡講師の論文がCell Reportsに掲載されました。

リンパ球は、全身の血管・リンパ節を循環しながら免疫監視をおこなっていますが、その細胞表面にある複数種類存在するインテグリンを使い分け、血管内皮に接着し組織に移動してウイルス・細菌に対する防御をしています。血流のある生体環境を再現し解析したところ、LFA1(αLβ2インテグリン)とそのリガンドICAM1の組み合わせでは「outside-inシグナル」と「inside-outシグナル」が同時に起こることで接着制御因子Rap1が活性し、インテグリン結合分子Talin1がリクルートされローリングから停止接着を誘導し、停止する段階でKindlin-3がさらに必要であることがわかりました。興味深いことに、インテグリンα4β7とリガンドMAdCAM1での組み合わせでは、ローリングにはRap1やTalin1、Kindlin-3は必要なく、「outside-inシグナル」から「inside-outシグナル」が連続して起こることが停止接着に重要であることがわかりました。これはインテグリンの種類によって活性化の制御様式そのものが異なるという新しい発見になります。インテグリンはリンパ球が集積するアレルギー・自己免疫疾患、あるいはがんの浸潤・転移などに深く関わっています。今回の発見により、免疫疾患やがんの新しい予防法、治療薬の開発に期待がもたれます。
なお、本研究についてまとめた論文が「Cell Reports」(インパクトファクター:9.995)に6月1(木)付(米国東部時間)で掲載されました。

Yuji Kamioka, Yoshihiro Ueda, Naoyuki Kondo, Yoshiki Ikeda, Wolfgang Bergmeier, Tatsuo Kinashi

Distinct bidirectional regulation of LFA1 and α4β7 by Rap1 and integrin adaptors in T cells under shear flow, Cell Reports, Vol. 42, Issue 6, 112580, JUNE 27, 2023

Published:June 01, 2023

DOI:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2023.112580

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2023年06月05日