関西医科大学iPS・幹細胞再生医学講座

研究概要

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はじめに

 再生医療の実現は、あらゆる医療者の悲願です。1980年代以降、胚性幹細胞 (ES細胞)人工多能性幹細胞 (iPS細胞)を用いた研究が進み、失われた組織を再生させるという夢の医療が実現する未来が少しずつ見えてきました。このES/iPS細胞の可能性はこれに留まらず、それまで検証が困難であった様々な生理現象を解明することに繋がりました。特に、遺伝子異常を抱える患者さんより樹立した疾患特異的iPS細胞によって、稀少疾患・難病の病態解明と治療法開発にも光が見え始めています。また、これらの多能性幹細胞は、医学研究に不可欠である様々な動物モデルの作製に大いに寄与しました。現在、創薬研究においてヒトES/iPS細胞より作製した細胞を直接用いた新たな薬剤スクリーニングが既に行なわれており、将来、動物実験を回避しつつ有効な医薬品を創生することにも、大きな期待が寄せられています。

 一方、組織幹細胞に関する研究と医療応用は、ES/iPS細胞に先んじて行なわれてきました。成体の各種組織には、ES/iPS細胞よりも分化能が制限された幹細胞 (体性幹細胞, 組織幹細胞)が存在し、組織修復や細胞の供給を行なっています。特に、造血幹細胞 (HSC)を用いた移植医療は、骨髄移植、臍帯血移植、末梢血肝細胞移植が年間5000件以上も行われています。ES/iPS細胞も、これら組織幹細胞のステップを経て目的細胞に分化させるため、組織幹細胞研究で蓄積された増殖分化機構や未分化性維持機構に対する理解と解析手段はES/iPS細胞研究においても必須となります。旧 幹細胞生物学(衛生学)講座では、ヒトHSCと、それを支える間葉系間質細胞 (MSC)の研究を進めてまいりました。中でも、ヒト臍帯血HSCの純化に関する研究では、ヒトHSCの世界最高純度を達成し、たった1個の細胞移植でヒト造血系を再構築し、HSCの新たな分化経路を発見するなど、ヒトHSCの本体に迫る成果を残しました。iPS・幹細胞再生学講座では、これらの研究ノウハウを継承し、幅広くES/iPS細胞の医療応用に向けた基礎研究を推進しています

iPS・幹細胞再生医学講座 研究内容

 iPS・幹細胞再生医学講座では、iPS細胞より作製する細胞を大きく限定せず、広く様々な再生医療応用の可能性を模索しています。人見・服部・藤岡の3ユニットが共存し、下記のようなテーマの研究を計画・推進しています。

  • 人見ユニット: 内分泌再生医療の実現, 内分泌機構の解明
            エリスロポエチン産生細胞,その他内分泌細胞など
            エリスロポエチン産生・調節・分泌機構の解明
            エリスポロエチン産生細胞による薬剤スクリーニングモデル開発
            内分泌細胞の医療応用
  • 服部ユニット: 心臓再生医療の高度化
            心筋細胞, 肝細胞など
            効率的な再生心筋細胞移植方法の開発
            AIを搭載した次世代多能性幹細胞自動培養装置の開発
            モノクローナル抗体を用いる心房梗塞の臨床検査法の開発
  • 藤岡ユニット: 造血幹細胞の分子制御機構の解明, 免疫系の再生
            白血病幹細胞特異抗原を標的とするモノクローナル抗体の作製
            ヒトiPS細胞由来Tリンパ球系細胞の誘導
            ヒトiPS細胞由来造血細胞の誘導
            造血幹細胞の特性・未分化性維持機構の解明