関西医科大学iPS・幹細胞再生医学講座

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Nature Communications誌掲載論文に関する
記者発表(プレスリリース)

 薗田精昭 客員教授(旧幹細胞生物学講座 教授)及び角出啓輔 研究員らのグループは、世界で初めてヒト臍帯血よりCD34抗原陰性造血幹細胞を純化することに成功し、臍帯血における造血幹細胞の特性解明に迫る研究を行ないました。この「ヒト臍帯血由来造血幹細胞の純化と幹細胞特性の解明に関する研究」に関する一連の成果が、英科学誌Nature Communicationsに、2018年6月6日付で掲載されました。これは、旧衛生学(幹細胞生物学)講座における薗田精昭 客員教授(当時 主任教授)の研究の集大成の論文です。

 本研究成果に関しまして、7月17日に、学校法人関西医科大学において薗田精昭 客員教授が記者会見を行ないます。詳しくは、下記ボタンのリンク先をご参照下さい。
 尚、開催期日は6月20日となっておりますが、6月18日の大阪府北部を震源とする地震災害のため、7月17日に延期となっております。

関西医科大学 プレスリリース詳報へ


研究の概要

 従来、人の造血幹細胞は、全てCD34抗原を細胞の表面に発現していると考えられてきました。一方で、マウスにおいては、CD34抗原陽性造血幹細胞と明確に区別される、最も未分化なCD34抗原陰性造血幹細胞が発見されています。ヒトの造血幹細胞の活性は、重症免疫不全マウスへの移植によって測定されますが、薗田精昭 客員教授は、この移植方法を改良し、胎児の血液であるヒト臍帯血の中にCD34抗原陰性造血幹細胞が存在することを、世界で初めて証明されました(2003年, Blood)。しかしながら、当時の造血幹細胞分取方法では、CD34抗原陰性細胞中に含まれる造血幹細胞の割合は、わずか25000分の1と極めて低く、その特性を解明することは困難でした。そこで、本研究では、薗田精昭 客員教授らが新たに発見した造血幹細胞の目印であるCD133及びGPI-80を用いることで、ヒト臍帯血から世界最高純度でヒトの造血幹細胞を分取する技術を開発しました。この技術は、CD34抗原陰性造血幹細胞のみならず、CD34抗原陽性造血幹細胞のも併せて回収することが可能です。この技術を使って回収したCD34抗原陰性または陽性造血幹細胞を、たった1個を移植するだけで、赤血球・白血球・血小板を含む、ほぼ全てのヒト造血系をマウス体内に再構築することに世界で初めて成功しました。そこで、この技術を使って回収したCD34抗原陽性または陰性造血幹細胞を、1個ずつ遺伝子発現やコロニー形成能をプロファイリングするなどして特性を解析しました。その結果、ヒトCD34抗原陰性造血幹細胞は、1) 血液細胞の階層制上、頂点に位置する未分化造血幹細胞であり、2) 造血支持因子の非存在下では、巨核球・赤芽球共通前駆細胞に直接分化しうる性質を有することが解明されました。また、従来、臍帯血の造血幹細胞は成人の造血幹細胞と同様に、殆ど分裂しない静止期にあると考えられてきました。しかし、本研究の結果は従来のパラダイムを覆し、3) ヒト臍帯血由来造血幹細胞は活発に増殖する胎児期の性質を有することが示唆されました
 この研究成果により、造血幹細胞数を正確に測定できるようになりました。これにより、患者様への造血幹細胞移植療法における移植用臍帯血の選別・品質保証に応用することが可能です。


原著論文

A revised road map for the comittment of human cord blood CD34-negative hematopoietic stem cells.
(ヒト臍帯血由来CD34抗原陰性造血幹細胞を頂点とする新たな階層制モデルの提唱)

掲載情報: Nature Communications 9, Article number 2202 (2018)
責任著者:薗田 精昭
1
著者:角出 啓輔2松岡 由和3河村 孟4中塚 隆介3藤岡 龍哉5、 浅野 弘明6、 瀧原 義宏7

1 研究主導者・責任著者 関西医科大学医学部iPS・幹細胞再生医学講座 客員教授
2 筆頭著者 関西医科大学医学部iPS・幹細胞再生医学講座 基礎医学振興奨励金特別研究員
3 関西医科大学医学部iPS・幹細胞再生医学講座 助教
4 関西医科大学医学部整形外科学講座 助教
5 関西医科大学医学部iPS・幹細胞再生医学講座 准教授
6 京都府立医科大学大学院保健看護情報科学講座 准教授
7 広島大学医学部 原爆放射線医学研究所 放射線災害医療センター 教授


お問合せ

研究内容について
学校法人 関西医科大学医学部 iPS・幹細胞再生医学講座
客員教授: 薗田 精昭(そのだ よしあき)
Mail: sonoda@hirakata.kmu.ac.jp

報道について
学校法人 関西医科大学法人事務局 広報戦略室
〒573-1010 大阪府枚方市新町二丁目5番1号 関西医科大学広報戦略室
TEL: 072-804-2128  FAX: 072-804-2344
Mail: kmuinfo@hirakata.kmu.ac.jp

学会での研究成果報告

本講座における研究成果は、この研究成果を社会一般の皆様に還元するべく、都度、関連の学会にて報告しています。現在、多くのスタッフが、日本血液学会や日本再生医療学会を始めとして、様々な学会に参加しており、一日でも早い再生医療への貢献を目指して励んでおります。

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