関西医科大学 医工学センター

研究テーマ

ラマン分光法:分子医学における新たな一歩

私たちは、生体組織、細胞、微生物、さらには細胞外小胞(エクソソームなど)を対象に、疾患のごく初期段階で生じる分子シグナルを解明し、早期診断および先制医療の実現を目指しています。その中核を担う技術が、ラマン分光法です。ラマン分光法は、標識や前処理を必要とせず生体試料を非破壊で解析し、その分子組成や生化学的変化を高感度に可視化できる強力な分析手法です。この特徴により、次世代の精密診断技術として大きな可能性が期待されています。当センターでは、医学・工学(物理学・化学・データサイエンス)を融合し、取得した分子情報を臨床的価値へとつなげることで、予防医学および精密医療の新たな地平を切り拓くことを目指しています。

研究内容

Raman signatures of type A and B influenza viruses: molecular origin of the “catch and kill” inactivation mechanism mediated by micrometric silicon nitride powder

Journal: RSC Chemical Biology
Published: February 2025
https://doi.org/10.1039/D4CB00237G

Raman Fingerprints of SARS-CoV-2 Omicron Subvariants: Molecular Roots of Virological Characteristics and Evolutionary Directions

Journal: ACS infectious Diseases
Published: October 2023
https://doi.org/10.1021/acsinfecdis.3c00312

Raman Fingerprints of the SARS-CoV-2 Delta Variant and Mechanisms of Its Instantaneous Inactivation by Silicon Nitride Bioceramics

Journal: ACS Infectious Diseases
Published: August 2022
https://doi.org/10.1021/acsinfecdis.2c00200

Incorporating Si3N4 into PEEK to Produce Antibacterial, Osteoconductive, and Radiolucent Spinal Implants

Journal: Macromol. Biosci
Published: June 2018
https://doi.org/10.1002/mabi.201800033

Raman spectroscopy of piezoelectrics

Journal: Journal of Applied Physics
Published: June 2013
https://doi.org/10.1063/1.4803740

Spatially resolved Raman and cathodoluminescence probes in electronic materials: Basics and application

Journal: physica status solidi (a)
Published: May 2011
https://doi.org/10.1002/pssa.201000785

On the role of oxygen vacancies and lattice strain in the tetragonal to monoclinic transformation in alumina/ zirconia composites and improved environmental stability

Journal: Biomaterials
Published: September 2010
https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2010.05.035

Raman tensor analysis of sapphire single crystal and its application to define crystallographic orientation in polycrystalline alumina

Journal: physica status solidi (b)
Published: August 2009
https://doi.org/10.1002/pssb.200945137

Raman piezo-spectroscopic analysis of natural and synthetic biomaterials

Journal:Analytical and Bioanalytical Chemistry
Published: October 2004
https://link.springer.com/article/10.1007/s00216-004-2780-1

1. Raman spectroscopy in cell biology and microbiology

Journal: Journal of Raman Spectroscopy
Published: April 2021
https://analyticalsciencejournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jrs.6204

生きたPC12/IFRS1共培養細胞のラマンイメージング(a)です。978 cm⁻¹と2938 cm⁻¹のラマン波数で取得したマップをそれぞれ緑と赤で重ね合わせ(b)、519 cm⁻¹と3470 cm⁻¹のマップをそれぞれ濃青と淡青で重ね合わせ(c)、2971 cm⁻¹のマップを黄色で示した(d)。このイメージングにより、個々の細胞におけるミエリン化の程度と、その背後にある化学的事象を可視化することができます。

2. Oxysulfur and organosulfur toxins: the hidden mediators of the oral-systemic connection

Journal: Frontiers in Microbiology
Published: June 2026
https://doi.org/10.3389/fmicb.2026.1823575

(a)P. gingivalis由来OMV(外膜小胞)が血液脳関門(BBB)を通過し、脳組織を汚染して神経細胞を分解させる可能性のある経路を示した模式図です。同じく(a)には、酵素部位および酸化されたシステイン部位において不溶性のジスルフィド結合が形成され、最終的にプラーク形成に至る過程を示す図も含まれます。(b)は、微量のP. gingivalis OMVで汚染した生きた神経細胞培養の光学像であり、(c)はそのハイパースペクトラルラマンマップです。このラマンマップは、258 cm⁻¹(赤)と267 cm⁻¹(緑)という2つの特定波数におけるラマン強度を表しており、それぞれジチオナイトおよびテトラチオン酸分子におけるS–S結合の伸縮振動に対応します。2色が重なる部分は黄色で示されており、(d)は、マップ上で選択した2箇所A、B(挿入図のラベルを参照)から抽出した局所ラマンスペクトルを示します。なお、(a)上のAβはアミロイドβを表しています。

3. Raman signatures of Cnm-positive Streptococcus mutans: I, the molecular origin of cerebral microbleeds

Journal: Frontiers in Microbiology
Published: April 2026
https://doi.org/10.3389/fmicb.2026.1784125

Cnm(−)Sm(a)とCnm(+)Sm(b)の細菌細胞における主な構造的相違点をまとめた模式図です。(a)は、ペプチドグリカン、壁テイコ酸およびリポテイコ酸に富む構造を示しています(いずれもリンカー、繰り返し単位、リン酸基、D-アラニル化、グリコシル化の各ユニットから構成される)。一方(b)は、細胞を覆う高度に無秩序化したCnmタンパク質層の出現と、ペプチドグリカン壁構造(テイコ酸およびリポテイコ酸部分を含む)の顕著な単純化を示しています。(b)における高度に無秩序化したCnmタンパク質には、スルフェン酸末端およびスルホン酸末端を持つ毒素が豊富に含まれています。(c)では、血中を循環するCnm(+)Sm菌が脳内出血を引き起こす機序について模式図が示されている:細胞間接合部の裂開部位で露出した基底膜への結合(左側)、および血管内皮細胞への直接侵入(右側)です。(d)には、硫黄化学を介したコラーゲン接着特性が描かれている:システインおよびスルフェン酸によるS–S結合を介したIV型コラーゲンへの直接的な結合から、インドキシル硫酸およびp-クレジル硫酸部分によって引き起こされる高血糖-炎症-凝固系を介した間接的経路までが含まれます。

4. Raman Metabolomics of Candida auris Clades: Profiling and Barcode Identification

Journal: International Journal of Molecular Sciences
Published: October 2022
https://doi.org/10.3390/ijms231911736

左から右へ:C. auris の異なるクレード/サブクレード(挿入図のラベルを参照)の高解像度顕微鏡像、各試料について機械学習ベースのスペクトル分離(2.3節参照)により得られた一連のガウス–ローレンツ型サブバンド(すなわち、図2のデコンボリューションスペクトルに示されたものと同一)、およびラマンバーコードを示しています。

5. Raman Fingerprints of Rice Nutritional Quality: A Comparison between Japanese Koshihikari and Internationally Renowned Cultivars

Journal: Foods
Published: November 2021
https://doi.org/10.3390/foods10122936

左側:(a)コシヒカリ(日本)、(b)カルナローリ(イタリア)、(c)カルローズ(アメリカ)、(d)バスマティ(インド)、(e)バスマティ(パキスタン)、(f)ジャスミン米(タイ)、(g)もち米(日本)、(h)もち米(タイ)の写真。 右側:上記8種類の米品種(挿入図のラベルを参照)について、購入時のままの籾を用いて200〜1800 cm⁻¹のスペクトル領域で取得したラマンスペクトル。スペクトルは各品種につき30回の測定値を平均し、約478 cm⁻¹に現れるグルコース環伸縮振動バンド(挿入図のラベルを参照)で規格化しています。PheおよびTrpはそれぞれフェニルアラニンおよびトリプトファンを表す略称であり、挿入図中の波数の単位はcm⁻¹です。

6. Silicon Nitride: A Bioceramic with a Gift

Journal: ACS Applied Materials & Interfaces
Published: June 2019
https://doi.org/10.1021/acsami.9b07997

窒化ケイ素(Si3N4)バイオセラミックスの表面化学を示した模式図。この表面化学が、本生体材料に骨形成促進作用と抗菌作用を同時に付与しています。

研究設備

LabRAM HR Evolution ラマン分光計(HORIBA)

このラマン分光計は、2Dおよび3Dの両方に対応した高度な共焦点イメージング機能を備えており、マイクロおよびマクロ測定に最適です。高解像度の共焦点ラマン顕微鏡として機能し、迅速かつ確実に詳細な分析を可能にします。

RAMANtouch

世界最速、最高画質のレーザーラマン顕微鏡。最先端の光学技術を取り入れた新設計の分光器と光学素子を搭載。

Quick Ammonia AT-2000型 クーロメトリー方式アンモニア計

迅速、正確、簡単に淡水から海水まで幅広い用途で、アンモニアを測定できます。