関西医科大学法医学講座


○父権肯定確率計算 (当事者死亡事例用) Probability of Paternity Likelihood in the Deceased Party

 擬父、母、子などが鑑定時点で死亡しているなどの理由で遺伝形質の検査ができない事例で、血縁者の検査結果から当事者の遺伝子型を推定して父権肯定確率・父権否定確率を計算するページを追加しました。

 計算はJavaScriptで行っています。血縁者の種類、人数によっては計算に数分以上の時間がかかりますので、なるべく高速のハードウェア、最新のブラウザ (Netscape 4.0、Internet Explorer 5.0以降) を使用し、ブラウザの設定でJavaScriptを有効にして下さい。
 ページをいったんロードしたら、インターネットの接続を切ってもかまいません (検査データは使用者のパソコン内のみで処理され、当方へ送られることはありません)。

父子鑑定用 (母の型が未検査でも計算できます) 当事者不在家系のSTRによる父権肯定確率計算 Version 5.02β

STR専用の試行版 (β版) で、レアアリルを削除した実用版。
父子鑑定用 (母の型が未検査でも計算できます) 当事者不在家系のSTRによる父権肯定確率計算 Version 5.03β

STR専用の試行版 (β版) の完全版。計算に1時間以上かかる場合があります。
母子鑑定用 (父の型が未検査でも計算できます) 当事者不在家系のSTRによる母権肯定確率計算 Version 5.52β

STR専用の試行版 (β版) で、レアアリルを削除した実用版。
母子鑑定用 (父の型が未検査でも計算できます) 当事者不在家系のSTRによる母権肯定確率計算 Version 5.53β

STR専用の試行版 (β版) の完全版。計算に1時間以上かかる場合があります。


◎当事者不在家系の父権肯定確率計算のアルゴリズム (共通方程式)
 参考文献:日本法医学雑誌 46: 254-265, 1992.

・不在者の遺伝子型の推定方法

 擬父・母の遺伝子型をそれぞれの両親と兄弟、あるいは配偶者と実子の検査結果から推定します。どちらの場合も両親と子どもの組み合わせに見立て、不在者の持ち得る遺伝子型をすべてピックアップしてリストを作製します。

 例えば擬父の両親や兄弟の親子で遺伝子型を推定する場合、両親の型が特定でき、擬父本人の型が4種類以内に特定できる場合は、各々の遺伝子型になる確率は以下の通りになります (A、B、C、D、…はあるSTRの対立遺伝子の種類)。

両親の型 (順不同) 子 (擬父) の型 子 (擬父) の型の確率
A/A型とB/B型 常にA/B型 1.0
A/A型とB/C型 A/B型またはA/C型 各0.5
A/B型とA/B型 A/A型、A/B型またはB/B型 順に0.25、0.5、0.25
A/B型とC/D型 A/C型、A/D型、B/C型またはB/D型 各0.25


 両親の遺伝子型が絞り込めず、多種類の遺伝子型が考えられる場合は、以下のように計算します。

両親の型 (順不同) 子 (擬父) の型 子 (擬父) の型の確率
A/?型とB/?型
(?は特定できない対立遺伝子)
A/A型、A/B型、A/C型、A/D型、
…、B/B型、B/C型、B/D型、…
下に記す結合確率から算出


 擬父を父とする親子でも同様に計算します。以上の計算を計算式で表現すると、以下のようになります。


 母、子、擬父の遺伝子型をPQ、RS、TU、その対立遺伝子をP、Q、R、S、T、U、対立遺伝子頻度をp、q、r、s、t、uとして、

F(PQ)=[1−(P≠Q)]×p×q
Z(RS)=[1−(R=S)]
K(PQ,RS)=−1/2{[(R=P)+(R=Q)]×s+[(S=P)+(S=Q)]×r}×F(PQ)÷Z(RS)
H(PQ,RS,TU)=1/4{[(R=P)+(R=Q)]×[(S=T)+(S=U)]+[(S=P)+(S=Q)]×[(R=T)+(R=U)]}×F(PQ)×F(TU)÷Z(RS)

という4関数を設けます (かっこ内の等式、不等式は、その式が正しければ−1、誤りであれば0を返す関係演算式)。

 擬父を父とする親子で、擬父の配偶者の型をPQ'、子の型を[RS']g (1≦g≦h) とすると、この親子の結合確率FMC1と、擬父の型がTUである確率P1(TU)は次式で求められます。

FMC1(TU,PQ',[RS']h
g=1
)= F(TU)・F(PQ') ・ h
Π
g=1
[H(PQ',[RS']g,TU)
────────
F(TU)・F(PQ')
]
P1(TU)=FMC1(TU,PQ',[RS']h
g=1
)/ z
Σ
k=1
FMC1([TU]k,PQ',[RS']h
g=1
)

 擬父を子の一人とする親子で、擬父の両親の型をAB、CDとし、擬父以外の子 (擬父の兄弟) の型を[EF]g (1≦g≦h) とすると、この親子の結合確率FMC2と、擬父の型がTUである確率P2(TU)は次式で求められます。

FMC2(AB,CD,TU+[EF]h
g=1
)= H(CD,TU,AB) ・ h
Π
g=1
[H(CD,[EF]g,AB)
────────
F(AB)・F(CD)
]
P2(TU)=FMC2(AB,CD,TU+[EF]h
g=1
)/ z
Σ
k=1
FMC2(AB,CD,[TU]k+[EF]h
g=1
)

 P1(TU)とP2(TU)は次式のように総合します。
P(TU)=P1(TU)・P2(TU)/ z
Σ
k=1
[P1([TU]k)・P2([TU]k)]

 以上で推定した擬父の各遺伝子型の確率から父権肯定確率を計算します。ただし通常の肯定確率計算では各遺伝子型の一般集団中における頻度を代入しますが、ここでは上で求めたP(TU)が1未満の場合、一般集団中における頻度の代わりにP(TU)を代入します。母や子が不在の場合も同様にP(PQ)、P(RS)を計算し、Y/Xは次式で求められます (プログラムではX/Yを表示しています)。
z
Σ
i=1
[ P([PQ]i)
F([PQ]i)
m
Σ
j=1
K([PQ]i,[RS]j)]
Y/X = ────────────────────────
z
Σ
i=1
z
Σ
k=1
[ P([TU]k)・P([PQ]i)
F([TU]k)・F([PQ]i)
m
Σ
j=1
H([PQ]i,[RS]j,[TU]k)]


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