女性診療科として思春期から老年期までのすべての病態に対応するために、婦人科管理、周産期(産科)管理、内分泌・不妊(リプロダクション)の3専門外来を毎日設けています。ご紹介いただいた患者さんは予診段階で振り分け、初診から直ちにそれぞれの外来で診察・治療を開始します。地域医療連携室経由で来られる場合も、これらの外来に直接時間予約していただけます。十分な時間を費やした個別対応を要する、更年期・老年期障害やGID(性同一性障害)についても各々週1回予約制での専門外来が設けてあります。また産褥婦を対象とした母乳外来も助産師が週1回担当しています。定例の外来検査としては、コルポスコピィ(腟鏡)下の病理生検、子宮鏡(組織生検含む)、子宮卵管造影、尿路造影などを、外来手術として子宮内膜掻爬術、外陰・腟・子宮頸部レーザー手術などを行なっています。婦人科での入院治療の主体は手術適応となる良・悪性腫瘍が多く、子宮頸癌は検診の普及で早期診断による子宮温存手術(頸部円錐切除)例も増えてきていますが、子宮体癌はなお進行期で診断されることが多い現状です。しかし、たとえ進行期であっても、手術(広汎手術とリンパ節郭清)およびその前・後の化学療法に放射線治療を組み合わせた集学的治療の結果、予後は着実に改善されてきています。卵巣癌についてはなお進行期で診断されることが多いのですが、最新のEBMに基づいた術後化学療法や維持化学療法を積極的に行なうことで、生存期間やQOLはかなり向上してきました。良性腫瘍(卵巣嚢腫、子宮筋腫など)については、入院期間の短縮と侵襲を軽減できる腹腔鏡下手術も、安全性に十分注意しながら行っています。さらに子宮筋腫に対する治療としては、手術以外にもホルモン療法や放射線科専門医による子宮動脈塞栓術(UAE)も積極的に勧めています。また腫瘍以外でも、日常生活に支障を来している子宮下垂、子宮脱、膀胱・直腸瘤などについての膣式手術も数多く手がけています。GIDの患者さんについては、精神神経科、泌尿器科、形成外科などと協調して対応し、倫理委員会の承認を得た上でホルモン療法や手術療法を行っています。不妊診療では、ホルモン検査から内視鏡検査(子宮鏡、腹腔鏡)までの系統的な検査や夫のスクリーニング検査を行い(異常あれば泌尿器科専門医受診)、また不育症については、自己抗体、抗リン脂質抗体、感染症検査、遺伝子検査などを施行し、各種薬物を使い分けた排卵誘発から人工授精までの不妊治療、ホルモン療法、免疫抑制療法、夫リンパ球免疫療法などによる不育治療などを行っています。なお現在は当院内で体外受精治療は実施していませんので、適応がある場合は関連する近在専門施設へ紹介し、排卵誘発やモニタリングなどで相互に協力しながら、不妊カップルの経済的・時間的負担の軽減を図っています。当院は大阪東地区および北河内地区での産婦人科救急医療システム(OGCS)基幹病院の役割を担っており、当該ルートを通じてあらゆる産婦人科救急患者を受け入れています。周産期母体搬送に関しては、小児科NICU病床(12床)が満床であれば受けられないこともありますが、その際はOGCSネットワークを通じて検索し、適切な搬送先施設を紹介します。現在の産科病棟およびNICUにおける周産期診療体制と実績は、施設基準の制約から厚生労働省の定める総合周産期母子センターとしての認可は受けてはいませんが、実質的にはセンターとしての機能を果たしており、母体管理はもとより、小児科、小児外科、脳外科などの協力を得て高度の胎児・新生児管理・治療を行っています。ちなみに平成15年度の産科入院統計では、OGCS経由の病棟へ直接受け入れが172件、外来紹介で179件、合計351件が、紹介患者となっていました。