教授挨拶


関西医科大学精神神経科 教授
木下 利彦

2011年7月に厚生労働省は、これまで「4大疾患」として重点的に対策を立ててきた、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病に、新たに精神疾患を加えて「5大疾患」とすることを表明しました。

糖尿病の患者数が200万人台で最も多かったのですが、精神疾患は300万人をはるかに超え、年々増加しています。
しかも、精神疾患の多くは原因が解明されていません。自殺者も年間約3万人は割り込むようになりましたが、まだまだ多く交通事故死亡者の3倍強の数字です。日本は先進国の中でも最も便利で、経済的にもかなり豊かな国ですが、それに比例するほど精神的には豊かでないのでしょう。経済格差も目立つようになり、透明性の高い社会は一見良さそうに見えるのですが、人々の嫉妬や自己愛を刺激する側面があるようです。

家族の愛に満たされない若者がなんと多いことでしょう。食べ吐きやリストカットを繰り返す若者を精神科外来で見かけない日はありません。
この風景は何を意味しているのでしょうか。愕然とした思いです。社会全体が目標を失って迷走しているような気さえします。
さらに母性的優しさ・父性的な保護環境の崩壊が子供たちを傷つけ、理解に苦しむような事件が頻発しています。
家庭内の問題処理能力の低下や、道徳心・倫理観の著しい衰退の影響も大きく関与しているようです。
私たちは、このような現代社会が抱えた大きな問題を取り扱っています。

精神科医を志す若き先生方、精神医学は生物学的要因、社会学的要因、心理学的要因と異なる3次元の要因を総合的に考察する、まことにユニークで興味深い学問領域です。
一人の精神科医ができることはたかが知れているかもしれませんが、少しでも世のため、人のためになる崇高な職業を一緒に実践してみませんか

 

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沿革

本学は1928年に設立された大阪女子高等医学専門学校を前身とし、大阪女子医科大学を経て、1954年に関西医科大学の名称となり現在に至っています。

本学における精神科の歴史は古く1932年にまで遡ります。当時の北野病院神経科部長で、後に和歌山県立医科大学名誉教授となる木村潔が外来診察を行うようになったのが最初で、その後、京都大学教授の三浦百重、大阪医科大学教授の満田久敏といった外部の医師が本学において診療を行っておりました。

現在につながる精神神経科学教室は、1958年に京都大学から岡本重一が初代主任教授として着任したことに始まります。
その後1984年には第二代の齋藤正己へ、そして1997年からは第三代主任教授として、木下利彦が教室を主宰し現在に至っております。
今までに輩出した同門会員は約200名弱に上り、関連病院をはじめとする様々な施設・機関で活躍しています。

本学の臨床上の特色としては、通常の外来・入院治療に加え、複雑化する精神疾患に対処するため、精神疾患患者の社会復帰を目的として、大規模デイケアを中心としたリハビリテ―ション部門、心理臨床部門、認知症部門を包括した「精神医療総合センター」を1999年に設置したことにあります。

また、2000年からは「もの忘れ外来」を設置し、本邦においても早い時期から高齢者医療に取り組んでまいりました。
2009年から「うつ病外来」などの専門外来の充実をはかっています。

入院治療としては、2002年からは薬物治療抵抗性/忍容性不良のうつ病、統合失調症、双極性障害などに修正型電気けいれん療法を開始するなど、大学病院としての特殊性を活かした医療を提供しています。

現在の教室員の構成は、教授、准教授、講師、助教、大学院生、研究医員、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士、鍼灸師という総勢30名以上の大所帯ですが、教室員一同、団結して、精神科医療の現在と未来に力を注いでいます。

創立当時の仮校舎(昭和3年)

岡本重一元教授を囲んで(昭和35年)

関西医科大学附属病院(昭和50年)

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