医療情報学II EBM体験実習

EBM体験実習

 

シナリオ1

 あなたは、最近、知り合いのおじさん(73歳)から質問を受けた。おじさんは、健康診断で血圧が高いことを指摘され、近くの医院へ受診したところ、本態性高血圧と診断された。糖尿病や腎疾患はなかったが、血圧は170 mmHg / 70 mmHgで、服薬を勧められた。おじさんは、あなたが医学生だということを知っていて、どうしたらいいのか、あなたに尋ねた。

課題(その1)
1.配布した資料 (SHEPの抄録)を参考にして、おじさんに降圧治療した場合の5年間での脳卒中発症率について検討してみましょう。
治療なしの場合のリスク
(X)
治療した場合のリスク
(Y)
相対リスク
(RR=Y/X)
相対リスク減少
(RRR=1-RR)
絶対リスク減少
(ARR=X-Y)
NNT
NNT=1/ARR
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ヒント
The 5-year incidence of total stroke was 5.2 per 100 participants for active treatment and 8.2 per 100 for placebo. ってことは、リスクは X = 8.2/100;Y= 5.2/100 (小数点第2位以下が四捨五入されているので、以降の計算値が文献の値とほんのちょっとだけ違ってきますが、この値で計算して下さい)。

クイズ
Q2 . medication reduced the incidence of total stroke by 36% の36%は、次のどれですか?
X, Y, RR, RRR, ARR, NNT

Q3 . absolute benefit of 30 events per 1000 participants は、次のどの値を示していますか?
X, Y, RR, RRR, ARR, NNT

Q4. 何人治療すると1人の発症を防げますか?
   (      )人

ここで:
治療なしの場合のリスクを X、治療した場合のリスクを Y とします。
そうしますと:
RR(Relative Risk): RR= Y/X (リスク比)
RRR (Relative Risk Reduction) : RRR=1-RR
ARR (Absolute Risk Reduction) : ARR=X-Y
NNT (Number Need to Treat): 1/ARR (何人治療すると一人の発症/死亡が防げるか)
という関係が成立します。

治療の研究における有効性の指標(文献から、これらの値を求める)
NNT :(Number Need to Treat) 何人治療すると1人の発症(死亡)が防げるか?
RR : (Relative risk) リスク比:暴露(治療)群での発症・死亡割合と非暴露(対照)群で
   の発症・死亡割合との比(RCTなど介入研究や、コホート研究で用いる)
RRR :(Relative risk reduction) 治療によって発症や死亡が減少する割合 (1-RR)
ARR : (Absolute risk reduction) 暴露(治療)群のリスクと非暴露群のリスクの差
オッズ (Odds)比:暴露群での発症・死亡のオッズと非暴露群でのオッズとの比(症例対照研究などの際に用いるRR。)
オッズ : ある事象/ある事象以外の事象(参考)
確率 : ある事象/全事象(参考) 

コホート研究では、たとえば治療群(ある要因の曝露群)と対照群(非曝露群)が時間とともに 発症・死亡するかしないかを調べます。結果は次のように書けます。

発症・死亡した 発症・死亡せず
暴露群 a b a+b
非暴露群 c d c+d

暴露群が発症・死亡するリスクは a/(a+b) で、対照(非暴露)群のリスクは c/(c+d) 
RR (リスク比)は暴露群のリスクを対照群のリスクで割ったものです。
RR={a/(a+b)}/{c/(c+d)}
発症頻度が非常に低い(稀な)疾患だと、曝露群においても発症・死亡は(a+b)より非常に小さいものとなり、(a+b)はほとんど b と等しくなります。同じように対照(非曝露)群では(c+d)が d とほとんど等しくなり、その結果、RRは:
RR≒ (a/b)/(c/d)=ad/bc
 もうひとつのリスクの見方としてオッズ(Odds)があります。たとえば、ある疾患の発症リスクを P とするとオッズは:
Odds=P/(1−P)
 発症頻度が非常に低い(稀な)疾患だと、1−P≒1となり、Odds≒Pとなります。

症例対照研究では疾患の発生ではなく、症例と対照を比較します。そこで、データは次のようになります。

症 例 対 照
暴露あり a b
暴露なし c d
a+c b+d

暴露の影響(暴露と結果の因果関係)を調べるには、暴露した症例と暴露した対照の割合を調べる必要が あります。それぞれの群のオッズは次のようになります:
症例の曝露オッズ=a/c
対照の曝露オッズ=b/d
オッズ比 は このふたつの値の比= ad/bc となり、稀な疾患ではRRと近似します。
 このように疾患のみられる頻度によってはオッズ比を近似的にRRとして扱えますが、対照研究研究で用いるオッズ比は症例群と 対照群の比較、はコホート研究のRRは曝露群と非曝露群の比較ですから、それぞれ、見方が違っているという事に注意しましょう。

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