脳死・臓器移植の行方

2009/09/16

生命倫理学資料


○脳死・臓器移植はなぜ必要か
●改正臓器移植法 (2010年7月17日施行予定) の特徴
  1. 脳死を人の死と定義
    →臓器提供を行う場合は脳死判定基準に基づいて判定 (法的脳死)。
    →臓器提供しない場合は厳密な脳死判定は行わず、臨床的脳死とみなして治療継続。

  2. 臓器提供に必要な同意:本人の拒否の意思表示がなければ、家族の同意のみで実施可能。

  3. 臓器提供可能年齢:制限なし (生後12週以上)。

  4. 臓器移植の親族優先:親子と配偶者への優先は可能。

●現行の脳死判定の問題点

○臓器移植の歴史的経緯

○現行 (初代) の臓器移植法の問題点
  1. 人の死の定義があいまい (臓器移植の成否により変わる)。

  2. ドナーが少なく臓器移植の例数が少ない (海外で移植を受ける患者も多い)。

  3. 小児への臓器移植が不可能 (海外で移植。成人患者含めて臓器売買と揶揄される)。
    関連学会のアンケート調査 (1993〜98年):小児の心肺移植適応例143例、内77例が死亡、8例が海外で移植、3例が生体部分肺移植。

  4. 当初ドナーカードには眼球 (角膜) の項目がなかった (提供を制限されたくないため)。

  5. 腎移植は心臓死後も可能だが、脳死臓器提供施設以外での施設での心臓死後腎提供が減少。

●初代の臓器移植法に対する改正案 (代表的なもののみ)

<以下は2000年頃に作った討論用資料です>

●その他の論点/トピックス

  1. 臓器移植を受けたレシピエントが死亡しても、そのレシピエントからの臓器提供を拒否する遺族もいる。

  2. ドナー (成人) の体格が小さい場合、小児への移植が可能。

  3. 小児の脳死の原因:虐待またはその疑いのあるものも少なくない。

  4. 異状死体:脳死判定後に検視してから臓器摘出可。ただし司法解剖を行う場合は (警察と各施設との取り決めにより) 不可 (外国では支障のない臓器の摘出が可能な国もある)。

  5. 脳死を人の死とするかを選択できる法律:日本の臓器移植法とアメリカ合衆国ニュージャージー州の脳死法 (信仰に基づく脳死拒否権「良心条項」を導入。ユダヤ人の死生観を尊重したもの) のみ。

  6. ドナーの家族に葬儀代など、利益にならない範囲で報酬を払ってもよいという議論もある。

  7. 胚性幹細胞 (ES細胞:胚盤胞から採取。あらゆる組織に分化可) からの臓器複製も研究中。

  8. 関西医科大学の循環器センターの教授によると、心臓移植をした場合、移植心臓は急激に老化する (約10年で機能が低下する) ので、特に小児に心臓移植を行うのは問題があるとのこと。そのため代替医療の研究を進めている。


○討論ポイント

  1. 脳死を人の死とするのは医学的、倫理的に妥当か。「死」を法でどのように定義すべきか。

  2. 現行の成人からの臓器提供の条件を町野案のように緩和すべきか。本人の意思がドナーカード、ノンドナーカードなどの文書で明示されない場合 (口頭のみ) の対応はどうすべきか。本人の意思と遺族の意思が異なる場合はどちらを尊重すべきか。

  3. 小児からの臓器摘出の可否。可の場合、本人と親権者のどちらの意思を重視すべきか。小児の年齢により対応を変えるべきか否か。議論により明確な基準を考案してみること。

  4. 海外へ臓器移植にいかざるをえない現状でよいか。国内での移植を増やすべきか、どうすれば増えるか。臓器売買の問題点。ES細胞からの臓器複製/売買/移植の倫理的問題。

  5. ドナーの遺族はドナーの臓器だけでも生き続けることを願って移植に同意することが少なくないが、レシピエントの情報は遺族に全く伝えられない。この状況を変えるべきか。

  6. 異状死体からの臓器摘出について、手続き等を変えるべきか。その具体案を考察せよ。


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