脳死:全脳機能 (大脳〜脳幹) の不可逆的停止状態、全脳死。各臓器への血流が保たれている状態で、臓器移植のドナーとして理想的と考えられている。欧米では脳死を人の死と法律で定義しているが、反対の考えの人もいる。日本では「臓器の移植に関する法律」により、臓器移植が適切に行われる場合に限り心臓死でなく脳死を人の死とする限定脳死説を採用。
植物状態:大脳の機能が廃絶し、脳幹機能の一部 (特に下部脳幹) ないし全部が残っている状態。大脳機能のみの不可逆的停止状態、大脳死とほぼ同義。個人 (人格) を精神活動で定義するならば、植物状態になった時点でその人の死とする考え方もある。
一部の疾病に対し、現在の医学レベルでは臓器移植が唯一の現実的な治療法
(代替治療法:人工臓器、遺伝子治療、臓器複製、拡張型心筋症に対する左心室縮小形成手術など)
腎臓、角膜以外は酸素不足に弱い:心停止後すみやかに細胞が崩壊する→生体/脳死移植要
(腎臓は心停止後1時間もつが、心停止前に摘出した方が移植の成功率高い)
生体臓器移植は健康なドナーに侵襲と危険。心臓など生体からは移植できない臓器もある。
付記:2007年7月6日に、生体肝移植のドナー3005人のうち105人 (3.5%) に、術中、術後に胆汁漏れや大量出血などの重い合併症が生じ、46人が再手術を受けたとの日本肝移植研究会ドナー安全対策委員会の調査結果が報告された。
心臓死後の臓器移植も可能:心停止直前に臓器保護液を注入し、心停止後2分以内に摘出
→臓器保護液の注入が心停止を早まらせ、殺人罪に問われる可能性もある。
脳死を人の死と定義
→臓器提供を行う場合は脳死判定基準に基づいて判定 (法的脳死)。
→臓器提供しない場合は厳密な脳死判定は行わず、臨床的脳死とみなして治療継続。
臓器提供に必要な同意:本人の拒否の意思表示がなければ、家族の同意のみで実施可能。
臓器提供可能年齢:制限なし (生後12週以上)。
臓器移植の親族優先:親子と配偶者への優先は可能。
脳死判定基準:
(1) 深昏睡、(2) 瞳孔散大・固定、(3) 脳幹反射消失、(4) 平坦脳波、(5) 自発呼吸停止の5項目を6時間おいて2回判定。聴性脳幹誘発反応の実施も推奨。
6歳未満の小児は対象外。急性薬物中毒、低体温 (<32℃)、代謝・内分泌障害の患者は脳死類似状態になるので対象外。
自発運動、除脳硬直、除皮質硬直、けいれんが認められる場合は脳死でない。
小児で脳死判定を行わなかった理由:
脳死類似状態からの回復力が高く、脳死になっても心肺機能が長く保続する。
1999年には杏林大学病院で1歳児の心臓が脳死判定後340日、兵庫医大病院で同じく312日動いていた。
(このような場合、親が安楽死・尊厳死を願い出ても、現在では明らかな違法)。
脳死判定基準を満たさないが、遷延性植物状態に該当しない症例もある。
小児 (6歳未満) の脳死判定基準 (2000年):
検査項目は成人と同じで2回判定するが、24時間以上間をおく。生後12週未満は対象外とする。
2001年6月、一部の専門医が科学的根拠に乏しい (データ不足) と日本脳死・脳蘇生学会で反論。
2010年4月、7月からの改正臓器移植法施行をふまえて、厚生労働省の研究班が2000年の小児 (6歳未満) の脳死判定基準を踏襲する案を報告。
脳死判定後に「随意運動」様の上肢の動き「ラザロ徴候」が見られることがある。脊髄反射?
頭皮から誘導した通常の脳波が平坦化していても、鼻腔誘導による脳幹脳波が残存していることがある (沖井 裕関西医大法医学助手)。血管分布の異なる視床下部組織の生存?
1928年、世界初の角膜移植。
1950年に日本で164例の角膜移植実施 (眼窩腫瘍患者等から摘出)。
1958年、「角膜移植に関する法律」制定。遺族の同意により死体から摘出可 (遺族がいなければ自由) となる。
1963年、他病院へ角膜を斡旋するために国内初のアイバンク設立。
1968年8月8日、札幌医大で脳死者からの心臓移植が実施 (日本初、世界で30例目。レシピエントは83日後に死亡)。脳死判定や移植適応が問題となり (1973年、日弁連が警告)、移植医療不信を招いた。
1979年、「角膜及び腎臓の移植に関する法律」制定。腎臓が追加。本人の生前の意思が明確で遺族が拒否しない場合も可となる。変死者からの摘出は捜査に支障をきたすため禁止。
1997年10月16日、「臓器の移植に関する法律」施行 (20例実施をめどに見直し予定)。
臓器移植ができる条件:
本人の生前の文書 (ドナーカードなど) での意思表示
摘出時の家族の同意
15歳以上に限定
実施 (提供/移植) 施設の限定
※移植に関与しない医師2人以上で脳死判定。脳死判定〜移植の記録作成。臓器売買禁止。
(15歳以上に限定しているのは、自己決定権をベースにしているため)
1999年2月28日、高知赤十字病院で臓器移植法施行後国内初の脳死者 (原疾患:脳動脈瘤破裂) からの臓器摘出。
→阪大で心臓移植、信州大で肝臓移植が実施。
※中枢神経抑制剤フェノバルビタール投与下での臨床的脳死判定の実施、症状の悪化を招きかねない無呼吸テスト (人工呼吸器の停止) の実施、基準以下の脳波測定感度などが問題視。
(2001年10月に守屋文夫高知医大法医学助教授が脳死状態では脳の血液循環が低下し、薬物が血中に検出されなくても脳で高濃度に残留することを報告→法的脳死判定時に薬物残存?)
※脳死判定規則に違反する無呼吸テストを行ったことが問題視 (2003年2月18日、日弁連が人権侵害と認定し、ガイドライン・施行規則を遵守するよう勧告。1999年6月24日に脳死判定した大阪府千里救命救急センター [下記参照] に次いで2例目の勧告)。
1999年6月14日、宮城県の古川市立病院で国内初の交通事故による脳死者からの臓器摘出 (脳死臓器移植3例目):2回目の脳死判定後、検視を行ってから摘出。
→国立循環器病センターで心臓移植、京大で小児に部分肝臓移植を実施。
1999年6月24日、大阪府千里救命救急センターで特発性クモ膜下出血患者の脳死判定 (脳死臓器移植4例目)。
→肝臓は移植不適、腎臓のみ移植。
※脳死判定前からの臓器保存処置実施、無呼吸テスト2回、基準以下の脳波測定感度が問題視 (2002年3月25日、日弁連が人権侵害と認定し、ガイドライン・施行規則を遵守するよう勧告)。
1999年は合計4例の脳死臓器移植が行われた。
2000年6月7日、脳死判定8例目、医学的理由により全臓器の移植中止。
2000年8月22日、厚生省研究班が臓器移植法の改正案 (後述の町野案) を報告。
2000年11月5日、脳死臓器移植レシピエント死亡:臓器移植法施行後国内初 (脳死判定10例目、臓器移植9例目ドナーからの肝臓移植)。2000年は合計5例の脳死臓器移植 (脳死判定は6例) が行われた。
2001年7月1日、東京都の聖路加国際病院で脳死判定 (15例目。臓器移植14例目)。
→ドナーの家族の希望で、日本臓器移植ネットワークのレシピエント選定順位を無視し、2個の腎臓は親族に移植 (親類への脳死臓器移植は国内初)。
※臓器移植法第2条第4項「移植術を必要とする者に係る移植術を受ける機会は、公平に与えられるよう配慮されなければならない」に抵触?
数回の臓器移植委員会を経て、厚生労働省は2002年3月18日と4月12日にホームページで意見を募集。
2001年は合計8例の脳死臓器移植が行われた。
2001年11月22日、自民党脳死・生命倫理及び臓器移植調査会が小児の臓器提供を盛り込む臓器移植法改正の検討開始。
2002年4月15日、東京都の日本医大病院で脳死判定 (20例目。臓器移植19例目)。北大病院で肝臓移植。腎臓も移植。2002年は合計6例の脳死臓器移植が行われた。
2002年6月10日、レシピエント死亡:7人目 (5例目ドナーからの肺移植)。
2002年6月11日、超党派の「生命倫理研究議員連盟」(代表・中山太郎元外相) が臓器提供者を15歳未満にすることを含めた臓器移植法の抜本的な見直しを検討開始。
2003年10月18日、日本臓器移植ネットワークの調査で国内ではドナーの家族の同意から臓器の摘出終了までに、平均30時間かかっていたことが判明。厚生労働省の臓器移植委員会はこの時間を短縮するため、2回目でなく1回目の脳死判定後に移植施設へ連絡することを検討 (ただし、脳死確定前の移植準備となる)。
2003年10月18日、腎臓の移植を希望していた50歳代男性がドナー登録していたので鹿児島市立病院で脳死判定され臓器摘出 (移植希望者のドナーは国内初。脳死判定27例目、臓器移植26例目)。
※脳死判定で、患者の血中酸素濃度が推奨値未満で無呼吸テストを実施。副院長は「血圧などの状態も踏まえ、脳死判定は可能と判断した」とコメント。
2003年は合計3例の脳死臓器移植が行われた。
2004年2月25日、自民党の脳死・生命倫理及び臓器移植調査会 (宮崎秀樹会長) が臓器移植法改正案をまとめる (下記改正案参照)。
→超党派の生命倫理研究議員連盟 (中山太郎会長) と調整の上、国会提出を予定。
→2004年6月9日、環境が整備されていないとして、今国会の提出を見送る。次期国会提出をめざすとのこと。
→2005年4月6日、脳死を一律に人の死とする改正案の詳細が報道される。来月への国会提出をめざすとのこと。
2004年7月5日、40歳代患者が神戸市立中央市民病院で脳死判定され臓器摘出 (脳死判定31例目、臓器移植30例目)。2004年は合計5例の脳死臓器移植が行われた。
2005年11月26日、41例目の脳死判定 (臓器移植40例目)。2005年は合計9例の脳死臓器移植が行われた。
2006年3月31日、自民党・公明党の有志議員がそれぞれ臓器移植法改正案を議員立法として国会に提出 (下記改正案参照)。
2006年10月1日、愛媛県の宇和島徳洲会病院で昨年9月28日に行われた生体腎移植手術について、ドナーに金品を渡して腎臓を入手したとして、「臓器の移植に関する法律」違反でレシピエントとその内縁の妻が逮捕される。同法 (臓器売買の禁止) 違反での逮捕者は初めて。
2006年12月17日、51例目の脳死判定 (臓器移植50例目)。2006年は合計10例の脳死臓器移植が行われた。
2007年7月6日、生体肝移植のドナー3005人のうち105人 (3.5%) に、術中、術後に胆汁漏れや大量出血などの重い合併症が生じ、46人が再手術を受けたとの日本肝移植研究会ドナー安全対策委員会の調査結果が報告された。
2007年7月9日の毎日新聞の報道によれば、臓器売買の合法化が検討されているフィリピンで腎臓移植を受けた患者の継続診療をしない方針の日本国内の病院が増えているとのこと。臓器売買に加担したと判断されれば、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科せられる可能性があるため。
2007年9月14日、61例目の脳死判定 (臓器移植60例目)。2007年は合計13例の脳死臓器移植が行われた。
2008年5月2日、国際移植学会が「臓器取引と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言 (Declaration of Istanbul on Organ Trafficking and Transplant Tourism)」として、移植用の臓器を各国国内で公平に分配し、国際的な臓器等の売買から貧困者を保護するよう提唱。これを受け、諸外国で外国人への臓器移植を制限〜中止する動きが起こる。
2008年5月13日、71例目の脳死判定 (臓器移植70例目)。2008年は合計13例の脳死臓器移植が行われた。
2009年1月30日、81例目の脳死判定 (臓器移植80例目)。
2009年2月9日、2007年5月に臓器売買を禁止し、外国人への臓器移植を原則的に禁止した中国で、その後少なくとも日本人17人が腎臓や肝臓の移植を受けていたことが判明。移植を仲介した大阪府のNPO法人幹部は臓器売買ではないと釈明。
2009年4月9日、自民、公明両党が議員立法で国会に提出されている三つの臓器移植法改正案 (下記A〜C案) を4月中に採決する方向で検討に入る。世界保健機関 (WHO) が5月の総会で国外での渡航移植を原則禁止するガイドラインを示す可能性が高く、(特に小児患者の) 海外での臓器移植が不可能になるため。
→審議は5月に持ち越し、5月15日、第4案 (D案) を国会に提出。なお、新型インフルエンザA H1/N1の世界的流行により、WHOの国外移植に関するガイドライン発表が延期する可能性が出てきた。
2009年6月18日、国会に提出されている四つの臓器移植法改正案 (下記A〜D案) について衆院本会議で採決が始まり、最初のA案が賛成263票、反対167票で、過半数の賛成を得て可決した。
→2009年7月7日、脳死を人の死と定義しない修正A案を国会に提出。
→2009年7月13日、参院本会議でA案が賛成138票、反対82票の賛成多数で可決 (修正A案は否決)。1年後の施行に向けて、厚生労働省は小児の脳死判定基準の設置などを検討し、法律の運用に関する指針の改正に取りかかる。
2009年9月15日、厚生労働省の厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会が改正臓器移植法における親族への優先提供について「親子と配偶者」に限定することで合意。2009年は合計7例の脳死臓器移植が行われた。
2010年4月5日、厚生労働省の研究班が小児 (6歳未満) の脳死判定基準について2000年に公表された基準案 (上記) を踏襲する案を報告。
2010年5月21日、世界保健機関 (WHO) 年次総会で海外渡航移植の自粛を求める新指針案を承認。内容は、(1) 渡航移植の自粛 (渡航先の国民の臓器移植を妨げるから)、(2) 臓器売買の禁止、(3) 生体移植は情報提供を十分受けた親族間で行う、(4) 未成年者の臓器提供は原則不可、など。
2010年7月5日、第28回移植関係学会合同委員会が改正臓器移植法施行に先んじて移植実施施設を追加認定した。
※心臓移植:従来の6施設 (国立循環器病センター、大阪大学、東京大学、東北大学、九州大学、東京女子医科大学) に新たに3施設 (北海道大学、埼玉医科大学、岡山大学) を追加し9施設となった。このうち15歳未満の小児の心臓移植施設には3施設 (国立循環器病センター、大阪大学、東京大学) が認定された。
※脳死肝移植:従来の13施設 (大阪大学、岡山大学、九州大学、京都大学、慶應義塾大学、信州大学、東京大学、東北大学、長崎大学、名古屋大学、新潟大学、広島大学、北海道大学) に8施設 (自治医科大学、国立成育医療研究センター、順天堂大学、金沢大学、三重大学、京都府立医科大学、神戸大学、熊本大学) を追加して21施設となった。このうち、自治医科大学と国立成育医療研究センターの2施設は、18歳未満のみを対象とする。
※脳死膵臓移植:従来の16施設 (北海道大学、東北大学、福島県立医科大学、新潟大学、東京女子医科大学、東京医科大学八王子医療センター、国立病院機能千葉東病院、名古屋第二赤十字病院、藤田保健衛生大学、京都府立医科大学、大阪大学、奈良県立医科大学、神戸大学、広島大学、香川大学、九州大学) に2施設 (獨協医科大学、京都大学) を追加して18施設となった。
2010年7月17日、改正臓器移植法施行。
2010年8月9日、改正臓器移植法で初の脳死者 (20代男性) からの臓器移植を開始 (移植87例目)。本人は臓器移植の意思を文書で示しておらず、生前の本人の話から家族が移植に同意。
人の死の定義があいまい (臓器移植の成否により変わる)。
ドナーが少なく臓器移植の例数が少ない (海外で移植を受ける患者も多い)。
小児への臓器移植が不可能 (海外で移植。成人患者含めて臓器売買と揶揄される)。
関連学会のアンケート調査 (1993〜98年):小児の心肺移植適応例143例、内77例が死亡、8例が海外で移植、3例が生体部分肺移植。
当初ドナーカードには眼球 (角膜) の項目がなかった (提供を制限されたくないため)。
腎移植は心臓死後も可能だが、脳死臓器提供施設以外での施設での心臓死後腎提供が減少。
町野案 (町野 朔上智大法学部教授の厚生省研究班、2000年8月22日)
臓器移植の可否にかかわらず、脳死を人の死と定義。
生前に反対意思を表明していなければ、ドナーカード不所持でも遺族の承諾で臓器摘出可
(人を「死後の臓器提供へと自己決定している存在」と定義)。
親権者の承諾があれば15歳未満の小児からの臓器摘出も可 (小児自身の意思は不問)。
森岡・杉本案 (森岡正博大阪府大倫理学教授、杉本健郎関西医大助教授、2001年2月14日)
脳死を一律に人の死と定義しない (現行の限定脳死説を支持)。
臓器提供はあくまで本人の意思表示を原則とする。
国連総会「児童の権利条約」に準じ、小児でも臓器提供の意思表示の機会を与える。
(6歳未満は意思表示困難なため脳死判定、臓器提供の対象外とする)
心臓死後の臓器提供も本人の生前の意思表示を原則とする。
日本小児科学会代議員アンケート結果 (2001年5月5日、公開フォーラムで公表)
脳死を人の死と認める:賛成80%
子供からの脳死移植が必要:賛成72.6%、反対12.6%
町野案の主旨:賛成34.0%、反対50.1%
自民党の脳死・生命倫理及び臓器移植調査会 (宮崎秀樹会長) の臓器移植法改正案 (2004年2月25日/*2005年4月6日追記)
◎臓器移植ができる条件:
本人の「拒否」の意思表示がない。
(「提供」の意思表示がなくても可。ドナーカードでなく、ノンドナーカードの所持が問題となる?)
年齢制限は設けない。
(初代の臓器移植法で禁止されていた15歳未満も可。以前は脳死判定を行えなかった6歳未満も可)
家族の承諾が必要。
(家族がいない場合はやりほうだい?)
脳死を一律に人の死とする。*
(家族や本人の同意がなくても、医師の判断で脳死判定・死亡宣告ができる)
ドナー自身の親族への移植優先の意思表示を認める。*
(臓器移植法第2条第4項「移植機会の公平性の配慮」の変更)
自民党・中山太郎衆議院議員外5名の臓器移植法改正案 (2006年3月31日、第164回国会衆第14号議案) (A案)→2009年6月18日に衆院本会議で、7月13日に参院本会議で可決。2010年7月17日に施行予定。
脳死宣告:脳死を人の死と定義し常時可。臓器提供する場合は下記の同意が必要だが、臓器提供しない場合は本人の意思と家族の同意は不要。
臓器提供に必要な同意:本人の拒否の意思表示がなければ家族のみで可。
臓器提供可能年齢:制限なし (生後12週以上)。
臓器移植の親族優先:可能→親子と配偶者に限定される見込み。
公明党・斉藤鉄夫衆議院議員外3名の臓器移植法改正案 (2006年3月31日、第164回国会衆第15号議案) (B案)→衆院本会議でのA案可決により廃案。
脳死宣告:臓器移植をする場合のみ可。本人の意思と家族の同意が必要 (従来通り)。
臓器提供に必要な同意:本人の意思と家族の同意の両方 (従来通り)。
臓器提供可能年齢:12歳以上。
臓器移植の親族優先:可能。
社民党・阿部知子衆議院議員外2名の臓器移植法改正案 (2007年12月11日、第168回国会衆第18号議案) (C案)→衆院本会議でのA案可決により廃案。
脳死宣告:脳死を人の死とする国民的同意は得られていないが、臓器移植をする場合のみ可。本人の意思と家族の同意が必要。脳死判定で脳血流の消失の証明を追加。
臓器提供に必要な同意:本人の意思と家族の同意の両方 (従来通り)。
臓器提供可能年齢:15歳以上 (従来通り)。
臓器移植の親族優先:不可 (従来通り)。
その他:生体臓器移植、組織移植の規制も強化。生体臓器移植ではドナーはレシピエントの2親等以内に制限。
自民党・根本匠、民主党・笠浩史衆議院議員外5名の臓器移植法改正案 (2009年5月15日、第171回国会衆第30号議案) (D案)→衆院本会議でのA案可決により廃案。
脳死宣告:臓器移植をする場合のみ可。本人の意思と家族の同意が必要 (従来通り)。
臓器提供に必要な同意:本人の意思と家族の同意の両方 (従来通り)。
臓器提供可能年齢:家族が同意し第三者機関 (医療機関の倫理委員会など) の審査に通れば15歳未満も可。
臓器移植の親族優先:不可 (従来通り)。
自民党・古川俊治参議院議員外与野党有志の臓器移植法改正案 (2009年7月7日、第171回国会) (修正A案)→2009年7月13日に参院本会議で否決。
脳死宣告:臓器移植をする場合のみ可 (従来通り)。
臓器提供に必要な同意:家族のみ (本人の意思は不要)。
臓器提供可能年齢:制限なし (生後12週以上)。
臓器移植の親族優先:可能。
●その他の論点/トピックス
臓器移植を受けたレシピエントが死亡しても、そのレシピエントからの臓器提供を拒否する遺族もいる。
ドナー (成人) の体格が小さい場合、小児への移植が可能。
小児の脳死の原因:虐待またはその疑いのあるものも少なくない。
異状死体:脳死判定後に検視してから臓器摘出可。ただし司法解剖を行う場合は (警察と各施設との取り決めにより) 不可 (外国では支障のない臓器の摘出が可能な国もある)。
脳死を人の死とするかを選択できる法律:日本の臓器移植法とアメリカ合衆国ニュージャージー州の脳死法 (信仰に基づく脳死拒否権「良心条項」を導入。ユダヤ人の死生観を尊重したもの) のみ。
ドナーの家族に葬儀代など、利益にならない範囲で報酬を払ってもよいという議論もある。
胚性幹細胞 (ES細胞:胚盤胞から採取。あらゆる組織に分化可) からの臓器複製も研究中。
関西医科大学の循環器センターの教授によると、心臓移植をした場合、移植心臓は急激に老化する (約10年で機能が低下する) ので、特に小児に心臓移植を行うのは問題があるとのこと。そのため代替医療の研究を進めている。
○討論ポイント
脳死を人の死とするのは医学的、倫理的に妥当か。「死」を法でどのように定義すべきか。
現行の成人からの臓器提供の条件を町野案のように緩和すべきか。本人の意思がドナーカード、ノンドナーカードなどの文書で明示されない場合 (口頭のみ) の対応はどうすべきか。本人の意思と遺族の意思が異なる場合はどちらを尊重すべきか。
小児からの臓器摘出の可否。可の場合、本人と親権者のどちらの意思を重視すべきか。小児の年齢により対応を変えるべきか否か。議論により明確な基準を考案してみること。
海外へ臓器移植にいかざるをえない現状でよいか。国内での移植を増やすべきか、どうすれば増えるか。臓器売買の問題点。ES細胞からの臓器複製/売買/移植の倫理的問題。
ドナーの遺族はドナーの臓器だけでも生き続けることを願って移植に同意することが少なくないが、レシピエントの情報は遺族に全く伝えられない。この状況を変えるべきか。
異状死体からの臓器摘出について、手続き等を変えるべきか。その具体案を考察せよ。