積極的優生学:出産を増加させるが弱者を放置し、自然に淘汰されるのを待つ
消極的優生学:障害者や遺伝病患者に産児制限 (人工妊娠中絶)、隔離、断種 (不妊手術) を行う=主流
1907年アメリカ合衆国インディアナ州で断種法が制定。1923年までに全米32州で制定 (カリフォルニア州などでは梅毒患者、性犯罪者も対象)。
ナチスドイツは政権を得た1933年にカリフォルニア州を参考にした遺伝性疾患子孫防止法を公布 (福祉による経済負担の軽減が目的)。
1939年 (開戦と同時に)、障害者を安楽死させるT4作戦を秘密裏に実施 (戦争末期までに275,000人を虐殺)。
1942年にゲルマン民族優生思想の下にホロコースト (ユダヤ人虐殺) を開始 (510〜650万人)。
スウェーデンでは福祉国家の確立を訴えたハンソン社民党政権下で1935年に断種法が制定され、1975年まで施行 (計62,888件。米独と異なり女性が多い)。
1941年に同意を必要とするが対象者を反社会的生活者まで拡大。実情は半強制的。
1990年代後半に賠償問題に発展。
日本では東京帝國大學衛生學教授永井潜がスウェーデンを視察後、1930年に日本民俗衛生學會を設立。
永井を委員長とする委員会が建議案を内閣に提出し、1940年に国民優生法が成立、任意申請による断種が合法化。
1941〜1945年で435件実施。ただし優生学が本格化するのは戦後の優生保護法成立後。
1960年代より、出生率の低下などによる経済条項の削除や生命尊重論者による中絶禁止の優生保護法改正運動が始まる。日本が堕胎天国とされ、海外からの堕胎ツアーも社会問題となる。人権論者、障害者団体等からは14条1〜3号の削除を要求。
1970年代、女権論者団体はウーマンリブ運動で人工妊娠中絶のさらなる自由化を要求。
海外の中絶法:1955 ソ連、1967 英国、1970 デンマーク・フィンランド、1972 東独、1973 USA (連邦最高裁判決で中絶を容認。ほとんどの州法では違法)、1974 オーストリア・スウェーデン、1975 仏、1976 西独、1977 イスラエル、1978 イタリア、1988 仏で人工妊娠中絶薬RU486認可 (日本では現在も未承認)、1990 ベルギー、1992 インドネシア、1993 ポーランド、1995 ドイツ連邦 (1992に一時停止)。
母体保護法:1996年施行。らい予防法廃止と同時に、優生保護法から優生学的条項を除く
第1条 (目的) この法律は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする。
第3条 (医師の認定による不妊手術) :優生保護法同条の4、5号のみ残される。
第14条 (医師の認定による人工妊娠中絶) :優生保護法同条の4、5号のみ残される。
1999年、日本母性保護産婦人科医会は、障害胎児の中絶を認める「胎児条項」、不妊治療で生じた多胎妊娠の胎児の一部を中絶する「減数手術」を母体保護法に加えるべきという見解を報告 (堕胎罪に抵触する可能性があるから)。
2000年の日本の中絶数341,146件 (99.9%が経済条項による)、出産数1,190,526。全妊娠の22.3%が中絶 (10歳代で44,477件、69.2%、40歳以上の女性で26,446件、63.4%)。
(2000年に10歳代で第1子を出産した母親のうち「できちゃった結婚」が81.7%、約12,000件。全年齢では26.3%、15万件)
日本の中絶数は、2001年が341,588件 (10歳代で46,511件)、2002年が329,326件 (44,987件)、2003年が319,831件 (40,475件) と、2001年をピークとして漸減しており、社団法人、家族計画協会は経口避妊薬 (ピル) の普及をその要因と考えている。
現在行われている遺伝子治療
単一遺伝子病に対し、正常な遺伝子をウィルスベクターを用いて患者体内に導入し、機能を補填する方法
癌や後天性免疫疾患に対し、癌抑制作用や免疫能賦活作用をもつ遺伝子を導入して疾病を治療する方法、など
※人体内の全細胞の遺伝子を作り変えることは不可能。
一方、受精卵や胚の遺伝子を改変すれば、全身の細胞の遺伝子を置き換えることになり、効率的かつ絶対的
→しかし人間改造も可能となり、かつ遺伝される
→非倫理的?(技術があればそれを実施する者が出現し得る→優生思想の具現化の危惧)
疾病や障害の治療法の開発が、その患者の優生学的差別思想に連続する可能性
(治療しなければならない→存在してはならない?)
優生学的人工妊娠中絶 (胎児条項) の是非について。
母体保護的人工妊娠中絶 (特に経済条項) の是非について。
出生前診断をすべきか。一般論、自分の場合。
医学 (特に遺伝子検査・治療) の発展は優生学を再来させるか。させないようにするにはどうしたら良いか。