法医学講義 死亡診断書 (死体検案書)
Certificate of Death (Inquest Report of Fatal)
※死亡届の右半分が死亡診断書 (死体検案書) になっている。


<死亡診断書 (死体検案書) 作成の一般注意事項>
- 楷書で記入。番号付きの選択肢を選ぶ場合は数字を○で囲む。
- 時刻は12時間制 (夜の12時:午前0時、昼の12時:午後0時)
- 印刷文字を2重線で消す場合:捺印不要。
- 自分の書いた文字を訂正する場合:2重線で消し、捺印。
- 空欄:斜線を引き、空欄のまま残さない。
- できるだけ詳細に記入する。
伝聞、推定による記述にはかっこ内にその旨を記す。
<死亡診断書か死体検案書か?>
いずれかを判断して、書類最上部欄外の印刷文字の不要な方を2重線で消す。
診療継続中の病気による病死→死亡診断書。
その他→検案→死体検案書
<氏名 (Name)>
本名不明の場合:「(不詳)」と記載する。
(通称、あだ名等が分かっていれば「通称 ○○」と記載する)
母親が明らかで出生届の出ていない嬰児:「○○の分娩した嬰児」と記載する。
<生年月日 (Date of Birth)>
生後30日以内の場合は出生の時刻も記入する。
生年月日不詳の場合は推定年齢をかっこでくくって記入する。
例) (30歳代)
<死亡したとき (Date and Time of Death)>
不詳の場合:わかる範囲で記入し、「頃」、「(推定)」などを付ける。
全くわからない場合: (不明) とする。
遺産相続の問題等で重要なので、慎重に記入しなくてはならない。
<死亡したところ (Place of Death) 及びその種類>
適当な種類を数字で選び、その住所を記載する。
施設の名称は、死亡したところの種類が1〜5 (病院や老人ホームなど) の場合のみ記載する。
水死体:漂流死体の場合、死亡場所は不明。
→発見場所の住所を記載し、「(発見)」と付記する。
→状況を「外因死の追加事項」や「その他特に付言すべきことがら」欄に記入する。
<死亡の原因 (Cause of Death)>
- I欄 (Part I):ア→イ→ウ→エの順に記載 (医学的因果関係が必要)
(ア) 直接死因 (Immediate Cause)
疾病の終末期の状態としての心不全や呼吸不全は用いない (全ての死因で経過する現象だから)。
症状名や俗語 (心臓麻痺など) は用いない。
発症の型、病因、部位、性状もわかる範囲で付記する。
例) 肝炎→急性A型肝炎、肺炎→肺炎連鎖球菌性肺炎。
簡潔に、かっこを使わずに記載する。
例)(ア) 高血圧による脳出血→(ア) 脳出血、(イ) 高血圧
肝炎(C型)→C型肝炎
(イ)〜(エ) 原死因 (Underlying Cause)
疾病のみならず、交通事故、転落など事故の形態も入る。
例) 交通事故 (車両衝突) による肋骨骨折で入院中に肺炎を併発して死亡した場合、
(ア) 肺炎、(イ) 肋骨骨折、(ウ) 車両衝突
○検案しても死因がわからない場合
警察や受診していた医療機関等から必要な情報を入手する。
- 臓器障害、合併症、後遺症 (甲状腺障害、脳血管疾患の後遺症など)が特定できる場合
→死亡の原因欄に記載する。
- よりおおまかに器官系の疾患が特定できる場合 (感染症、循環器系の疾患、呼吸器系の疾患など)
→死亡の原因欄に記載し、状況を「その他特に付言すべきことがら」欄に記入する。
- 全く不明の場合
→死亡の原因欄に「不詳」と書き、状況を「その他…」欄に記入する。
(即死か否か、発症後24時間未満の死亡か否か、死亡時に立会者がいたか否かに留意)。
「その他特に付言すべきことがら」の記載例)
心肺停止状態にて来院し、蘇生術を施行したが不成功。
発症後24時間未満での死亡。原因は特定できなかった。
- II欄 (Part II)
○直接には死因に関係していないが、I欄の経過に影響を及ぼした傷病名、事故の状況などを記載。
(Significant Conditions Contributing to Death but not Resulting in the Underlying Cause Given in Part I)
例) I欄 (ア) 肺膿瘍、(イ) 大葉性肺炎、II欄 糖尿病
○妊産婦の死亡の場合:妊娠週数を記載。
例) 「妊娠満○週」、分娩中なら「妊娠満○週の分娩中」
○出生後1年未満の死亡の場合:
産後42日未満→「妊娠満○週産後満○日」
産後42日以降:産科的死亡原因の場合→「妊娠満○週産後満○日」
産科的死亡原因でない場合→記入不要
○出生後1年以上の死亡で産科的死亡原因の場合→「産後○年○カ月」
○低出生体重児の場合→「低出生体重児」と記載する。
- 発病 (発症) または受傷から死亡までの期間 (Approximate Interval: Onset to Death)
年・月・日で記載。1日未満の場合は時間・分で記載。
明確でないが比較的短時間で死亡した場合→「短時間」と記載。
- 手術 (Operation):I欄及びII欄の傷病名に関係のある手術についてのみ記入。
- 解剖 (Autopsy):解剖を行った場合に記入。
<死因の種類 (Manner of Death)>
死因の原因欄 (ア)〜(エ) の内、一番下に記載してある原死因で判断する。
例) (ア) 腹膜炎、(イ) 腹部刺傷 → 外因死 (他殺)
死因の種類により生命保険の支払金額が大きく変わる場合があるので、慎重に記入しないと問題になる。
- 病死及び自然死 (Natural Death):疾病、老衰
外因死−不慮の外因死 (Accident):明らかな事故・災害・過失の場合
- 交通事故:交通機関 (車、鉄道、飛行機、船など) による死
- 転倒・転落:同一平面上での転倒、高いところからの転落
- 溺水:溺死。ただし水上交通機関の事故によるものは (2) 交通事故になる。
- 煙、火災及び火焔による障害:火災による死
(火災現場で被った火傷、CO中毒、窒息、物の落下などによる死を含む)
- 窒息:頚部・胸部の圧迫、気道閉塞、気道内異物等による死
- 中毒:薬毒物との接触、服用、注射等による死
- その他:熱射病、凍死、潜函病、感電、機械による事故、落下物による事故、落雷、地震など (2〜7にあてはまらないもの)
外因死−その他及び不詳の外因死:自他殺または不詳
- 自殺 (Suicide):死者自身の行為に基づく死 (手段・方法は問わない)
- 他殺 (Homicide):他人による加害、あるいはその後遺症による死
- その他及び不詳の外因 (Death by Execution or Battle / Pending Investigation):刑死・戦死の場合、不慮の外因死か自他殺か判別できない場合
(溺死や焼死の場合、入水した原因や火災発生の原因は医学的には判定できない場合が多いので、死因の種類は4や5よりは11にしたほうが無難)
- 不詳の死 (Could not Be Determined):病死か外因死か全く不詳の場合 (白骨死体など)
→「その他特に付言すべきことがら」欄に詳細を記入する。
<外因死の追加事項>
死亡の種類が2〜11の場合に記入する (伝聞・推定情報も記入する)。
○傷害が発生したとき (Date and Time of Injury):不明確の場合は推定時刻を記入。
○傷害が発生したところ (Place of Injury) の種別:
- 住居:自宅に限らず、居住地内の建物、敷地、車庫など
注) 老人福祉施設、寄宿舎、病院、母子寮は「4 その他」になる。
- 工場及び建築現場:敷地も含む。発電所、鉱山なども含む.。
- 道路:車道、歩道、ハイウェイ
- その他:学校、映画館、体育館、デパート、ホテル、駅、農地など。
かっこ内に具体的に記入。
○傷害が発生したところ (Place of Injury):都道府県名及び市区町村名 (行政区域) を記入。
例)大阪府守口市 (町名等不要)、大阪市旭区 (県庁所在地は都道府県名不要)。
大阪府豊能郡豊能町 (郡部は町村名まで記載する)。
○手段及び状況 (How Injury Occurred):可能なかぎり具体的に記入。
- 交通事故:死亡者の状況 (歩行者か、自転車・オートバイ・乗用車乗車中か、乗車中なら運転手か同乗者か)、事故の状況 (乗用車と何 [歩行者/乗用車/その他] との衝突か)、事故の場所 (路上、路上外など)
- 溺水の場合:場所 (浴そう内、川など)、状況 (川への転落、遊泳中など)
- 薬物中毒:薬物名、薬効 (解熱、睡眠など)、状況 (過量投与、不注意など)
- 転倒、転落:事故の場所 (自宅、崖など)、状況 (階段からの転落、平地での転倒など)
- 自殺:手段の種類により同様に記載。
<生後1年未満で病死した場合の追加事項>
母子健康手帳を参考にして記入。
<その他特に付言すべきことがら>
これまでの記載内容でさらに説明を要する場合に記入する。
例) 死因が不詳である場合の理由・状況の説明
<診断年月日 (Date Certified / Date of Inquest)>
表題と同様に診断、検案のいずれか不要なものを二重線で消す (3ヶ所)。
診断 (検案) 年月日と発行年月日をそれぞれ記入。
<署名 (Signature of Certifier)>
自分の署名であれば捺印は不要。
<その他>
記載に不備があると保健所等から照会されることがあるので、その場合は回答する。
遺族からの死亡診断書 (死体検案書) の追加発行の要請や内容の質問は拒否できない (医師法第19条2)。
遺族以外からの要請→遺族の同意書が必要。
さもないと守秘義務違反で罪を問われる。
参考書:吉村昌雄著、1995年死亡診断書 (死体検案書) 作成マニュアル、東京法令出版、など。
参考:英文死亡診断書の記載例