心療内科学講座

《研究概要》

 心療内科の研究は、身体疾患を対象に、身体と心の相互関係(心身相関)についての病態解明と、診断法および治療が中心である。このため、従来のような「病原体→感染症」のような単純な線形モデルに基づく解析では困難なことが多く、bio-psycho-socio-ethical の各要素についての関係性を考えなければならない(システム論的解析)。そこで生体のストレス反応についてカオス解析を試みることや、行動科学的手法、質的研究などの新しい手法を用いて研究を行なっている。

○消化器疾患に関する心身医学的研究
 厚生省班会議の一員として、FD(functional dyspepsia)の病態解明を行なっている。FD患者の胃機能測定に胃電図や胃内pHセンサーを用い、さまざまなストレスを負荷することによって、情動と胃運動機能との関係を研究している。結果の分析においては、複雑系の観点よりカオス解析を試みている。このほかにも食道機能、腸管機能、胆嚢機能についての同様の研究や、消化性潰瘍、慢性膵炎、潰瘍性大腸炎などの心身医学的研究を行っている。

○慢性疼痛に関する心身医学的研究
 慢性疼痛は心理社会的要因が密接に関与し、治療においてはシステム論的アプローチが必要である。研究についても同様で、たんなる病因論的な分析ではなく、多元的病態把握を中心に研究を行なっている。

○サイコオンコロジー(精神腫瘍学)に関する心身医学的研究
 国立がんセンターと共同研究で、がん患者のリエゾン心身(精神)医学的解析を開始した。参加施設の中で心療内科は当施設のみで、他はすべて精神科であるためか、興味深い結果が出つつある。また、がん患者に心身医学的グループ療法を行ない、どのような臨床結果を得られるか試みている。

○アレルギー疾患に関する心身医学的研究
 約200名の気管支喘息患者に対し、心身医学的治療を行っている。とくに難治性の気管支喘息は一般内科的治療のみでは不充分であり、簡易心理療法、自律訓練法、交流分析などが必要となる。また、喘息患者の性格傾向について分析し、身体因子としてアトピー型/非アトピー型との関連について解析した。

○内分泌・代謝疾患に関する心身医学的研究
 厚生省班会議の一員として、摂食障害患者の臨床研究を行なった。摂食障害患者の治療については病院のみでは困難なことが多く、米国では自助グループ、代替医療など、他の施設のかかわりも当然とされている。しかし日本での医療機関以外の施設の利用実態については不明なことが多く、その解析を行なった。また、糖尿病患者にたいするチームアプローチについても成果を発表した。

○代替医療に関する心身医学的研究
 米国では西洋医学理論に基づかない治療以外はすべて代替医療とされ、われわれ心療内科領域の治療はほとんどが代替医療の範疇ということになる。その中の1つであるバイオフィードバック(BF)については、従来のオペラント条件付け学習モデルとなる疾患(書痙、斜頚など)から、さまざまな疾患を広く対象とするようになり、研究対象も広がった。さらに東洋医学など、他の代替医療についても臨床研究中である。

《研究業績》


原  著

  1. 中井吉英,竹林直紀 (2001)
    統合医療プロジェクトとネットワーキング.
    日本代替・相補・伝統医療連合会議誌 3:63-65
  2. 竹林直紀,吉岡りか子,垣内晶代,入井由花,三谷有子,西田慎二,所昭宏,神原憲治,四宮敏章,中井吉英 (2001)
    統合医療プロジェクト2001.
    日本統合医療学会誌 1: 60-65
  3. 西田慎二、所昭宏、関原ひとみ、西山順滋、神原憲治、下荒神武、中井吉英
    心身医療に求められる卒後医療、
    日本心療内科学会誌 5:213-217
  4. 福永幹彦(2000)
    慢性腹痛患者の6年間の治療.
    心療内科 4:69-75、
  5. Fukunaga M, Arita S, Ishino S and Nakai Y(2000)
    Quantitative analysis of Gastric Electric Stress Response with Chaos Theory.
    Biomedical Soft-computing and Human Sciences 5:59-64,

総  説

  1. 中井吉英,竹林直紀,所 昭宏(2001)
    心身医学よりみた未病―心身症としての生活習慣病を予防するために.
    医のあゆみ 197:307-311
  2. 中井吉英(2001)
    心身医学における催眠の応用.
    臨床催眠学,1:3-9.
  3. 中井吉英(2001)
    心療内科の予防医学や衛生・公衆衛生学における役割.
    日本衛生学雑誌  56:472-483
  4. 中井吉英(2001)
    消化性潰瘍.
    日医師会誌 126:365-367.
  5. 中井吉英、福永幹彦、竹林直紀、所 昭宏(2001)
    心療内科と精神科の診療分担、連携のありかたと今後の課題.
    日本心療内科学会誌 5:149-153.
  6. 竹林直紀,中井吉英 (2000)
    代替医療の背景.
    ターミナルケア 10:333-336
  7. 竹林直紀,中井吉英(2001)
    代替医療―心身医学の立場より−.
    心療内科 5: 236-24
  8. 竹林直紀,福永幹彦 (2001)
    行動変容支援ツールとしての応用精神生理学―バイオフィードバックと自律訓練法―.
    日保健医療行動会報 16:80-91
  9. 黒丸尊治(2001)
    患者の信頼を得るために:すべては信頼関係から始まる、
    総合消化器ケア2000 5: 70-71
  10. 黒丸尊治(2001)
    心療内科領域におけるアロマテラピーの現状と可能性
    アロマテラピー学雑誌 1: 11-15
  11. 黒丸尊治(2001)
    行動変容を促す患者とのかかわり方:行動変容力と心の癒す力
    総合循環器ケア 1: 127-130
  12. 黒丸尊治(2001)
    行動変容を促す患者とのかかわり方:従来の患者指導を考える
    総合循環器ケア 1: 148-151
  13. 黒丸尊治(2001)
    行動変容を促す患者とのかかわり方:信頼感や安心感の築き方
    総合循環器ケア 1: 158-162
  14. 黒丸尊治(2001)
    統合医療における「つながり」の重要性
    統合医療学会誌 1: 110-115
  15. 黒丸尊治(2001)
    行動変容を促す患者とのかかわり方:行動変容のきっかけを作る、
    総合循環器ケア1: 141-144
  16. 黒丸尊治(2001)
    行動変容を促す患者とのかかわり方:行動変容のきっかけを作る、
    総合循環器ケア1: 149-152
  17. 藤田光恵、平井タカネ、竹林直紀、町田英世、加藤文恵、中井吉英(2001)
    過食症グループ療法の試み
    心身医学41: 287-296
  18. 町田英世、所明宏、中井吉英(2001)
    家族療法−システムズ・アプローチ.
    痛みと臨 1:311-316
  19. 下荒神武、阿部哲也、町田英世、中井吉英(2001)
    心療内科からみた慢性疼痛.
    関節外科 20:140-144
  20. 所 昭宏、安水悦子、黒丸尊治、橋爪 誠、中井吉英(2001)
    心療内科医によるサイコオンコロジーの実践.
    心身医学 41:105
  21. 所 昭宏、町田英世、竹林直紀、中井吉英(2001)
    心療内科からみた疼痛へのアプローチ
    リウマチ科 26:165-170
  22. 下荒神武、竹林直紀、中井吉英(2001)
    心療内科からみた難治性疼痛の基礎と臨床.
    痛みと臨 1:255-262
  23. 四宮敏章、中井吉英(2001)
    胸痛の原因となる諸疾患とその特徴(消化管疾患)
    カレントテラピー 19: 27-30

学会発表

  1. 中井吉英,竹林直紀(2001)
     統合医療プロジェクトとネットワーキング(シンポジウム)
    第5回日本代替・相補・伝統医療連合会議大会,東京
  2. 橋爪 誠,宮田たみ恵(2001)
    「気管支喘息患者の性格傾向―アトピ−型と非アトピー型の比較」
    第13回日本アレルギー学会春季臨床大会、横浜
  3. 竹林直紀(2001)
    心療内科におけるリハビリテーションとバイオフィードバック(シンポジウム)
    第29回日本バイオフィードバック学会総会,札幌
  4. 竹林直紀,吉岡りか子,垣内晶代,入井由花,三谷有子,西田慎二,所昭宏,神原憲治,四宮敏章,中井吉英 (2001)
    統合医療プロジェクト2001(シンポジウム) 
    第1回日本統合医療学会,東京
  5. 黒丸尊治、関原ひとみ、清水由江、堺恵利、奥村孝子、相田貴子、中井吉英(2001)
    心療内科受診患者の症状改善に関与する要因の検討
    第42回日本心身医学会総会、鹿児島
  6. 黒丸尊治(2001)
    統合医療における「つながり」の重要性
    第1回統合医療学会、東京
  7. 藤田光恵、中井吉英
    「糖尿病の患者教育におけるチームアプローチ」
    第42回日本心身医学会総会、鹿児島
  8. 西田慎二、所昭宏、中井吉英(2001)
    心身医療に求められる卒後教育
    第5回日本心療内科学会総会、東京
  9. 西田慎二、中井吉英(2001)
    興味深い経過をたどった疼痛性障害の一例.
    第37回日本東洋心身医学研究会、東京
  10. 西田慎二、西本隆、中井吉英(2001)
    心身医療に対する東洋医学的治療の応用について.
    第42回日本心身医学会総会、鹿児島
  11. 西田慎二、所昭宏(2001)
    第22回日本絶食療法学会、東京 
  12. 所 昭宏、四宮敏章、中井吉英(2001)
    心療内科におけるサイコオンコロジー(精神腫瘍学)の教育の現状と今後の課題.
    第42回日本心身医学総会、鹿児島
  13. 所 昭宏、中井吉英(2001)
    がん患者の不安と抑うつー心療内科の教育の中でー
    第2回がん患者の抑うつと不安に関する研究会.甲府
  14. 下荒神武、松本早苗、南川義隆、中井吉英(2001)
    ITP発症を契機に軽快した難治性CRPStype1の1症例.
    第30回日本慢性疼痛学会総会、東京
  15. 四宮敏章、所 昭宏、下荒神武、中井吉英(2001)
    心療内科と他院在宅チームとの連携に工夫を要した末期膵癌の一例.
    第14回サイコオンコロジー学会総会,山梨県甲府
  16. 四宮敏章、所 昭宏、西田愼二、町田英世、中井吉英(2001)
    絶食森田療法にて軽快をみた慢性疼痛性障害の一例.
    第22回日本絶食療法学会, 東京
  17. 小林貴美子、吉岡実佳子、辻井悟、石井均、中井吉英(2001)
    抑うつ状態の改善に伴いコントロール良好となった糖尿病の4症例.
    第42回日本心身医学総会、鹿児島
  18. 杉本貴美子、吉岡実佳子、岡崎研太郎(2000)
    トラウマ状態の改善に伴いコントロール良好となった糖尿病の4症例.
    第44回日本糖尿病学会年次学術集合、京都
  19. 福永幹彦(2000)
    シンポジウム evidence based psychosomatic medicine: 良心的で思慮深い判断とは何か.
    第41回 日本心身医学会総会、東京

著  書

  1. 黒丸尊治(2001)
    嫌いな人とのうまいつきあい方 、
    PHP増刊号、東京
  2. 町田英世(2001)
    心身症.
    臨床医マニュアル改訂版(近藤克則編)549-553 医歯薬出版.東京
  3. 町田英世(2001)
    第6章家族の受けた医療からの仕打ち?医療的場面でのあれこれの指摘による症状の増悪?.
    システム論からみた思春期・青年期の困難事例 103-115 吉川 悟、村上 雅彦編 金剛出版 東京
  4. 町田英世(2001)
    翻訳:会話・言語・そして可能性 コラボレイティヴとは?セラピーとは? ハーレーン・アンダーソン著 野村直樹、青木義子、吉川悟訳、金剛出版 東京
  5. 所 昭宏、濱口杉大、中井吉英(2001)
    翻訳:暖和医療における精神医学ハンドブック(Harvery Max Chochinov, William Breitbart 編、内富庸介 監訳)229-237、星和書店、東京
  6. 杉本貴美子(2001)
    翻訳:糖尿病エンパワーメントCHAPTER7糖尿病療養指導士よ、汝自信をしれ(石井均 監訳)46-48、医歯薬出版.東京
  7. 杉本貴美子(2001)
    翻訳:糖尿病エンパワーメントCHAPTER8世界中から寄せられたエンパワーメント ストーリー(石井均 監訳)61-68、医歯薬出版.東京

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