1.運動課題遂行中のラット側坐核ニューロンの活動様式
互いに90度に設置された4ヶ所の等価な報酬場所を持つ円形のオープンフィールド(直径180cm)にラットを置き、フィールドの内および外に設置した視覚刺激を手がかりに報酬場所へ移動する運動課題の際の、側坐核ニューロン活動を記録し解析した。課題は、1)点灯中の2つの報酬場所間の往復、2)フィールド外の刺激を手がかりに点灯 していない2つの特定報酬場所間の往復、の2課題が交代に提示された。記録したニューロンの約半数は、ラットの場所移動、報酬獲得の前後、方向転換などの行動と関連した活動変化を示した。10%は報酬場所によって異なる活動性を示し(場所選択性)、25%は課題の交代等に反応(課題選択性)、50%は場所と課題の差異の両者に反応した。側坐核の場所選択性ニューロンは海馬の場所ニューロンと異なって、報酬という条件付きの場所に特異的な発火活動を示した。これらから、側坐核は海馬や他の領域からの入力を統合し、特定の目的地を目指す行動(ゴール指向行動)に関与することが示唆される。
2.サル視床−頭頂連合野投射の電気生理学的研究
サル頭頂連合野は視覚、体性感覚等の種々の感覚入力を皮質−皮質間投射を介して受ける一方、枕核等の視床核からの線維連絡も形態学的に知られている。一方、頭頂連合野の一部、頭頂間溝の前後壁に表面−陰性、深部−陽性電位(浅層性視床大脳皮質応答)がサルの手による自発性運動に先行して出現することが最近報告された1。本研究では、視床刺激により誘発される大脳皮質フィールド電位、殊に浅層性視床大脳皮質応答に注目して解析することにより視床−頭頂連合野投射につき詳細に検討した。まず、ネンブタール麻酔下の急性実験で視床枕核刺激により上頭頂小葉及び下頭頂小葉の比較的広い範囲において、浅層性視床大脳皮質応答が記録された。陰性電位は、皮質表面より深さ約1700-1800μmで陽性電位に変わった。本応答を誘発する視床部位をより詳細に調べるため、多数の記録電極を頭頂間溝の前後壁を含む周囲の皮質に慢性的に設置して、視床内の多くの部位を微小電気刺激した。その結果、浅層性視床大脳皮質は主に後外側腹側核、後外側核、視床枕核吻側部・外側部・内側部刺激により引き起こされた。
1 Gemba H et al. (2000) Neurosci Res (Suppl 24) S17-3
3.ラット運動系皮質における大脳辺縁系入力に関する研究
大脳辺縁系と感覚系皮質との関係は近年、記憶との関連で多くの仕事がなされているが、大脳辺縁系と運動系皮質との関係については不明なことが多い。そこで大脳辺縁系皮質の1つである嗅周囲皮質 (perirhinal cortex)から前頭運動皮質への投射を詳細に調べた。嗅周囲皮質を電気刺激すると前頭運動皮質の皮質表面で陰性、深部で陽性のゆっくりした誘発電位(Latency, 約12 ms; Time to peak, 約 29 ms)が観測され、主に皮質表層の神経細胞を興奮させることを見出した。また、嗅周囲皮質を破壊すると、運動系皮質における聴覚誘発応答のうち表面陰性-深部陽性電位成分が消失あるいは大幅に減弱した。このことは、聴覚情報の少なくとも一部が嗅周囲皮質を介して運動系皮質に伝えられることを意味する。現在、この運動系皮質における大脳辺縁系入力が、運動の制御にどのような役割を果たしているのか研究中である。
4.歩行運動に対する運動野および頭頂連合野の関与
一般に動物が随意性歩行運動を行う際には多くの身体部位の筋肉が活動する。我々はサルに手の運動を自己ペ-スで行わせて大脳皮質の表面と表面から2-3mm深部に埋め込んだ電極で大脳皮質フイ-ルド電位を記録、分析することにより補足運動野、運動前野、運動野および体性感覚野の上肢領野から運動に約1秒先行する表面陰性-深部陽性の運動準備電位を得た。運動する手と対側の運動野および体性感覚野の準備電位は同側より著明であった。さらに同様の準備電位が頭頂間溝の前後壁で記録され、頭頂連合野の運動発現に対する関与が示唆された。その際運動する手と対側の頭頂連合野の電位振幅の方が同側より著明であった。手指の伸展運動の場合には手と同様の脳部位から準備電位が記録された。足指の伸展運動の場合は運動する指と対側の運動野および体性感覚野の躯幹領野、及び手指の場合と同じ頭頂連合野の部位から準備電位を記録した。躯幹の運動に先行する準備電位は運動野および体性感覚野の躯幹領野、及び頭頂連合野の内側よりの部位から記録された。
5. MONKEY VOCALIZATION AND CORTICA FIELD POTENTIAL
Cortical field potentials were recorded with electrodes chronically implanted on the surface and at a 2.0-3.0 mm depth in various cortical areas in monkeys performing self-paced vocalizations. Surface-negative, depth-positive (s-N, d-P) potentials before vocalization were recorded in the supplementary motor, premotor, motor and somatosensory areas. Such premovement potentials were recorded also in the cingulate and prefrontal cortices when a monkey uttered with intense motivation for reward. The right cerebellar hemispherectomy eliminated the s-N, d-P premovement potentials in the left motor area and in the caudal bank of inferior limb of the left arcuate sulcus (homolog of Broca's area ), and changed the tone. This suggested that the neocortical area homologous to the human speech area took part in the generation and control of monkey vocalization with the cerebellum possibly through cerebro-cerebellar interactions. Our morphological studies suggested that the cerebellum - VPLo - motor area and cerebellum - area x - premotor area neuronal connections were active during monkey vocalization.
Monkeys were also trained for audio-initiated vocalization, and cortical field potentials were studied. A s-N, d-P potential was recorded at 70 ms after the stimulus in the rostral bank of the inferior limb of the left arcuate sulcus, as in audio-initiated hand movements. In the motor cortex, s-N, d-P slow potentials were recorded at about 200 ms from the stimulus and 700 ms before vocalization start, being almost similar to those in self-paced vocalizations. Reaction times were longer and more variable in audio-initiated vocalizations than audio-initiated hand movements. This suggested that central nervous mechanisms in audio-initiated vocalizations differed from those for audio-initiated hand movements.